筋膜治療について
筋膜調整.jpでは,筋膜治療の可能性の模索のために,さまざまな筋膜治療について紹介します!
筋膜に関する研究はここ30〜40年ほどで大きく発展しました.それまでは,皮膚,浅筋膜,深筋膜などをきれいに取り去り,筋外膜に覆われた筋を露出させるかに力が注がれていました.また,どのような筋が骨を介してどのような作用をするのかに関しての研究が主流でした.
しかし,生体においては,筋肉群の最大限の力を骨格に腱を経て直接伝達することは少ない.むしろ,筋膜が大部分の収縮力あるいは張力を伝えることがわかってきました.その筋膜は近場の関節だけではなく,遠く離れた関節にも影響を及ぼすことも明らかになってきました.
筋膜調整.jpでは筋膜の座学的な知識だけではなく,様々な筋膜の治療法なども紹介していきたいと思います.
筋膜治療の大枠
筋膜の治療は,徒手療法に限らず鍼治療,器具を用いた治療,運動療法など様々な方法がある.しかしながら,それぞれの筋膜に対するアプローチはエビデンスが高いものから低いものまで様々である.筋膜調整.jpでは筋膜がその方法によって明らかに直接的に影響を受けると考えられているアプローチから筋膜への効果がより推論的で一般的な方法まで,幅広く紹介していきたいと思います.
鍼
鍼治療は30年以上前から,西洋医学でも用いられるようになってきている.西暦紀元前200年から漢で始まった.鍼治療は,中国語で鍼灸”Needling burning"を意味している.今日では,解剖学的に明確な部位(経穴)などに穿刺またはお灸を用いて治療を行う.
鍼治療は,状況に応じて種々の鍼刺激手技を用いる.たとえば,反復性の突き,捻転,回転,あるいは電気刺激などを行う.他にもレーザー鍼や経穴への注射,または指圧のような手技も存在する.
Key word:陰と陽,氣,経穴,経路,内蔵(臓腑)
筋膜アプローチを援助する器具を用いた治療
刮痧(かっさ/グアシャ/Gua sha)
刮痧とは,東アジア伝統医学に欠かすことの出来ない手法であり,体表面に器具を用いて一方向に強い摩擦を加え,皮下組織の溢血を示す一時的な治療後の点状出血を意図的に生じさせること,と定義される.刮痧は,アジアの移民民族感で家族内においてのセルフケアあるいは家族のケアとして,何世紀にもわたって行われ,鍼灸師や東アジア伝統医学施術者によって臨床業務として世界的に行われている.
key word:痧(sha),内出血,こする,ひっかく,
グラストンテクニック(Graston Technique®)& テクニカ・ガビラン(TECNICA GAVILAN)
1994年に正式に紹介された,軟部組織の機能障害の効果的な治療にステンレススチール製の器具を組み入れたグラストンテクニックがある.また,グラストンテクニックが派生しテクニカ・ガビランなどもある.対象部位のストレッチングや筋力増強運動を含んだリハビリテーションプログラムに器具を用いた軟部組織モビライゼーション(Instrumented Soft Tissue Mobilization: ISTM)を統合する.
(左:グラストン, 右:テクニカガビラン)
注射によるFasciaリリース(hydro release)
超音波によるガイドを行いながら,身体に極力外のない溶液を硬結圧痛部位(筋外膜部位)に注入する.溶液が筋外膜内に注入されることで,筋外膜の癒着を剥がし筋膜の滑走性を向上させる.近年広く,日本の整形外科医やリハビリテーション医で流行している手法である.
徒手による筋膜治療
トリガーポイント療法(Trigger point therapy)
トリガーポイントは”緊張帯にある触診可能な過敏な小結節と関連する骨格筋にある過敏刺激感受性点”と定義され(Simons 1999),トリガーポイントをリリースすることで,生じた低酸素症や低pH(酸性化)をもとに戻し,組織の伸張性を正常化する事を目的として行う.治療介入は,徒手または物理療法を基にしたアプローチや手技を含む.
ロルフィング構造的身体統合法(Rolfing structural integration)
Ida P. Rolf博士によって開発された,重力下でのヒトの活動を編成する方法.ロルフィングはアライメントと協調性によって示されるような,構造的かつ機能的な統合性を強化する.ロルファー(ロルフィング療法士)は,症状がより全身性の機能障害を呈する観点から,アライメント異常あるいは慢性の筋骨格系症状に対してアプローチする.
筋膜誘導アプローチ(Myofascial induction approaches)
徒手接触で行う全身的なアプローチで,変性した筋膜組織の機能の回復に主眼を置いている.日本ではMyofascial Release(筋膜リリース)名前が変換され知られている. 治療者は低強度の機械的な3次元的な伸張や圧迫刺激を持続的60〜90秒与え,筋膜の網状組織(ネットワーク)の張力分布を修正する.
オステオパシー徒手的治療法(Osteopathic manipulative treatment)
オステオパシー(整骨療法)の徒手的な方法において筋膜要素の重要性が示されており,いくつかのテクニックが存在する.
・マッスルエナジーテクニック
・ストレイン・カウンターストレイン
・Myofascial release(筋膜リリース)
・頭蓋仙骨療法
結合組織マニピュレーション(Connective tissue manipulation)
Elizabeth Dicke(1953)とドイツの理学療法士,医師の一団によって独自に発展した.制限のある皮下組織を,正常な組織の可動性と結構に回復させる徒手の手技である.
筋膜マニピュレーション(Fascial Manipulation®)
筋骨格系の疼痛や内部機能障害障害に用いられる徒手療法で,イタリアの理学療法士 Luigi Stecco氏が開発した.鍼灸の経穴や経路を解剖学的に検討し,西洋医学,物理学などと統合し,ヒトの筋膜構造における三次元的な生体力学モデルに基づいた理論であり,筋膜は単なる一様な膜ではなく,その下に横たわる筋と関係がある特別な組織としている.死体解剖の知見から,筋膜の走行を数十パターンの筋膜配列・筋膜対角線・筋膜螺旋に定義し徒手的に圧と摩擦を与えるテクニックである.
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