コラム

最近,なぜ【筋膜】が注目されるのか?

 

なぜ、最近筋膜が重要と言われているのか?

 

膜組織,特に筋膜はすべての臓器,筋,神経及び小さな筋線維までも包み込み,組織と組織をかつ結びつけ,人体における連続的な張力ネットワークを形成している.しかし,その存在は何十年もの間,軽視され続けてきた。

 

 

なぜ今まで筋膜が軽視されてきたか?

    それは学者が解剖する際に膜・筋膜という組織が邪魔だったからです.(他の臓器を観察するために,皮膚を切り開いて最初に出てくるこの筋膜を取り除かねば筋や神経血管,臓器までもを観察することが出来ないので,その重要性は医療の現場(医師,解剖学者の間)では軽視されていた。)
しかし,近年のヨーロッパやアメリカを中心として医学的研究を通して,その膜・筋膜組織のの正体が明らかになりつつあります.
そして,現在筋膜に関する研究は解剖学的にもリハビリテーション分野でも組織学的な分野でも増加の傾向となっています.

第一回国際筋膜研究学術大会が2007年10月にハーバード大学で開催されたのに続き,第二回は2009年にアムステルダムで,第三回は2012年にバンクーバーで行われ,そして第四回に2015年にワシントンで開かれ,そして昨年2018年ベルリンにて第五回の国際筋膜学会が行われました.近年,世界中でこの筋膜という組織が急ピッチで研究されています.

 

 

”筋膜の定義:連続性が途切れない結合組織の3次元組織構造”

『筋膜』は一般的には,関節包,筋間中隔,靭帯,腱および線維組織(ie,神経上膜)ばかりではなく,密性結合組織(大腿筋膜,胸腰筋膜のような)によって形成される多層構造である。<Fascia research congress 2007>

~筋膜の構造~

 筋肉・臓器を覆う線維体で,筋膜自体は3層構造で出来ている。浅い部分(脂肪や神経,リンパなどを覆う)筋膜を『浅筋膜』,深い部分の筋膜(筋肉を覆っている部分)を『深筋膜』と呼びます。そしてこの『深筋膜』は「筋外膜」と「筋膜腱膜」という層に分けられる。そして,筋膜は全身を全身タイツの様に包み込み,骨・臓器・筋肉・靭帯・関節・神経・血管・リンパなど身体のすべての組織と結びつき身体にネットワーク網を構築し,そして身体の支持までも行う重要な組織なのです.

~筋膜の機能~

筋膜は殆どがコラーゲン(支持)線維そして,わずかなエラスチン(弾性)線維から出来ている。コラーゲン繊維はとても丈夫ですが伸張性はあまり無く,一方弾性繊維はゴムのように伸縮性に冨み筋肉の収縮に合わせて伸縮します。コラーゲン性線維は弾性繊維に引っ張られる形で引き伸ばされます。

 

 

~筋膜が身体の不調を与える原因~

それでは筋膜に問題が起こると身体の中ではどんなことが起こるのか?
先程も書きましたが,筋膜は全身タイツのように全身を包んでいます.しかし,筋膜自体は伸びたり縮んだりはあまりしないと言われています.では何が問題なのか?それは筋膜の滑走不全(筋膜同士の滑りが悪くなる)が起こることが一番の問題とされています。

筋膜は3層構造であるために,その上下の筋膜の滑走を必要とします。その潤滑油として必要とされるのがヒアルロン酸という物質です。<Klein DM et al:Histlogy of the extensor retinaculum of the wrist and the ankle(J Hand Surg Am.1999) ヒアルロン酸は深筋膜や筋外膜から多く生成されます。<McCombe D et al:The histochemical structure of the deep fascia and its structual response to surgery(J Hand Surg Br.2001>

 

そのヒアルロン酸がちょうどいい量を維持することが出来れば筋膜は良く滑走して身体の調子がいい状態になるのですが,ヒアルロン酸が多すぎたりすると組織の粘稠性(ネバネバ)が強くなったりしてしまったり,組織が集まってくることにより,水分が押し出されその部分の組織の脱水によって滑走不全が起こります。<Matteini P et al:Structural behavior of highly concentrated hyaluronan(Biomacromolecules.2009)

そうすることで,滑りの悪くなった筋膜のせいで色々な組織の機能不全が生まれ,その代償が症状として様々な部位に起こってしまいます。   日本ではその筋膜に対して注射器を使い生理食塩水を注入することで症状が改善しました!などとおっしゃっている方々が医師を中心にいらっしゃいますが,

ココがダメ

2009年の研究で生理食塩水をヒアルロン酸に注入すると自己結合し,より固まってしまう事も証明されている。<Matteini P et al:Structural Behavior of highly concentrated hyaluronan(Biomacromolecles.2009)

 そのため,日本では筋膜の治療が流行りとして行われているが,安易な治療は症状を悪化させる恐れがあるために,施術者も患者さんもしっかりと下調べをして治療を行うことが重要である。

~痛い場所が問題とは限らない!~

筋膜の治療で一番難しくなってくるのが,痛い部位の筋膜の高密度化による滑走不全のせいで痛みが起こっているとは限らないということです.

それはどういうことでしょう?わかりにくいと思いますのでここで実技.

試しに,「あなたのシャツの右胸の下部あたりの生地を強くまとめて,そのまま左の手を挙げてみましょう。」 そうすると,左の肩の前から横にかけて苦しくないでしょうか?

身体の中では常にこのようなことが起こっています.そして,この筋膜の歪みが起きてしまう原因は,同じ姿勢を絶えずとっていても,また過去の捻挫などの怪我でも,手術の傷跡などが原因でも起こってしまいます.

 

足の怪我でも首や肩に影響を起こします。

 

試しに全身タイツを着て足首をガムテープで固定してみましょう。腕が挙げづらくなるはずです。

 

筋膜って不思議ですよね!

 

~最後に~

もしあなたが肩や腰の治療を何ヶ月もかけて通っている方であり,その凝っている肩や腰の部位をずーっとマッサージしてもらっている方。

 「気持ちいいかもしれません。」

ですが,すぐに痛みはもとに戻りませんか?

それは,おそらくあなたの問題は肩や腰にはなく,全く別の部位にあるのだと思います。

その問題を評価し解決してくれるのは「筋膜調整の知識のあるセラピスト」です。  筋膜調整.jpで知識を蓄えましょう!!

 

長文ご覧いただきありがとうございます。

 

 

Kazu
この記事を書いた人

《資格》 Advanced diploma of Physical Therapist (理学療法士:高度専門士) Certificated physical therapist in Orthopa ...

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