筋膜の学習

筋膜と神経の関係性

患者さんのしびれや痛みの訴えがデルマトームに沿っていなかったり、ヘルニアと言われていても所見が当てはまらない…なんて経験はありませんか?

 

それはもしかしたら,筋膜により問題が起きているかもしれません!

 

今回は、【筋膜と神経の関係】や,【症状の出るメカニズム】についてご紹介したいと思います。

 

筋膜と神経の関係性

 脊髄から出た神経は,椎間孔を通って脊柱管から出た後,それぞれの分布領域へ向かう. 脊髄は上下に連続して並ぶ31個の分節で構成され、各分節の運動線維と感覚線維が出ており, 椎間孔内で合流し、神経線維は末梢神経となって目的の領域へと向かう。1つの分節から出る神経に支配される皮膚領域を皮膚分節(デルマトーム)という。

(図:プロメテウス解剖学アトラス)

 

脊柱管から出た末梢神経は、筋の間などを通りながら、枝を出し、それぞれの領域へ伸びている。体の内部を通ってきた神経は、深筋膜を貫いて表面へ出てくる。さらに多くの枝に別れ、浅筋膜や脂肪組織の中を走り、神経終末となる。

末梢では、神経は常に浅筋膜や脂肪組織に包まれている。

浅筋膜と浅層脂肪組織には可動性があるため、長くより大きな神経路を提供し、神経を過度な伸張から保護する役割を持っている。

さらに、浅層脂肪組織と浅筋膜の中にはルフィニ小体とパチニ小体が存在する。ルフィニ小体は筋膜組織に包埋されており、浅筋膜の伸張を筋膜組織に知覚させる。パチニ小体は圧縮に影響される。これらの働きによって、浅筋膜と浅層脂肪組織は、外受容という観点でも皮膚と共に重要な役割を担っている。

 

神経の動きを保護してくれている浅筋膜が,癒着を起こして滑走が悪くなっていたり線維化していると神経の滑走を妨げ,動きとともに伸張されることでストレスがかかり神経伝達が変化してしまうことがある.
浅筋膜内に含まれるルフィニ小体とパチニ小体にも、過剰な刺激が加わってしまったり,働きが鈍くなってしまうことによって神経には間違った情報が入力されてしまうため,しびれや異常感覚を感じることもある.

神経が深筋膜を貫通する場所も,神経が絞扼されやすい部分の一つである.

 

それらの神経の通り道で絞扼が起きている場合,それより先の部分で筋力低下やしびれや感覚障害などの症状が出てくる.

神経がどこで損傷しているかによって症状の出方が変わってくる.ヘルニアなど神経根の損傷による感覚障害は神経根の分布に対応するパターンを示すが,末梢神経の損傷ではそれぞれの末梢神経の支配領域に一致して症状が起こる.浅筋膜や深筋膜の滑走性の低下は,神経支配領域とは一致しないしびれや痛みなどを引き起こすことがある.

 

これらの原理は血管やリンパ管も同様に深筋膜や浅筋膜が硬くなっていると血管やリンパ管が圧迫されて循環不良を引き起こすこともある。

神経症状と筋膜に関わる論文

 

yang LJらは、外科的治療に反応した筋膜欠損による神経ヘルニアに起因する浅腓骨神経症候群の症例について報告している。

22歳の男性は、運動機能の低下を伴うことなく、右のふくらはぎの側面と足の背側に疼痛と感覚異常を訴えた。運動すると、下腿の約12 cm上にやわらかい隆起が形成された。レントゲンと筋電図検査で異常は認めなかった。患者は、神経を覆う筋膜を分割する外科的減圧術により症状が軽減された。

浅腓骨神経症候群は、皮下組織内に進むために神経が筋膜を貫く点、もしくはその近くの点で神経の機械的圧迫により引き起こされる神経障害である。(yang LJ, 2006)

 

Teoman Toni Sevinçらも両側腓骨神経絞扼の症状に対し外科的治療にて症状が軽減した症例について報告している。20歳の女子大学生は、2ヶ月間、両足の外側に曖昧な痛みがあり、足部と母趾の背部にしびれを訴えていた。彼女の症状は、歩くことや走ることによって悪化し、部分的な除圧によって軽減された。疼痛のため連続歩行は30分であった。

下肢の外傷や手術歴、腰痛の病歴はなく、過去6ヶ月間に30 kgの体重減少があり、神経性食欲不振と診断されていた。身体検査では、両側の足関節周囲の外側に圧痛があり、Tinel徴候も両側で陽性。母趾の背部には感覚障害があったが、筋力低下や異常反射は存在しなかった。腰椎および下肢の検査では関節に臨床的異常は認められず、腰椎レベルでの神経根圧迫の疑いも、腓骨頸部での神経絞扼もなかった。

腰椎、下肢および足部のレントゲン検査は正常であり、足関節の近位にあるSPNの両側神経障害についてEMG試験は陽性であり、総腓骨神経または近位神経根に異常はなかった。

外科的治療では、両側の圧痛部位は、神経周囲線維症を伴う筋膜への両方のSPNの癒着があり、筋膜を分割することによって、神経を遠位方向および近位方向に解放した。

両側腓骨神経絞扼の症状は術後に直ちに消失した。術後癒着を防ぐために直ちに理学療法が開始され、手術後1年目に再発は観察されなかった。

 

<参考文献>

Lynda J. S. Yangetal: Superficial peroneal nerve syndrome: an unusual nerve entrapment  Case report

Teoman Toni Sevinç, et al; Bilateral superficial peroneal nerve entrapment secondary to anorexia nervosa: a case report

Wakana
この記事を書いた人

プロフィール 名前:Wakana Ishikawa 経歴:2011年理学療法士免許取得。都内の総合病院に勤務。 2016年Fascial manipulation® Level1 修了 Fascial ...

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